【 マーケターの眼 】 いきなりステーキ失速の真の理由
写真はアサ芸ビズから拝借しました。
ちまたでは、いきなりステーキの失速の理由について、社長のワンマンで、出店計画も社長の勘や感覚で決めていた、などという話が出ています。
この話を聞くにつけ、批評している人たちは、いきなりステーキに行ったことはあるのかと疑問に感じます。
行ったこともなく、耳取材、目取材だけで批評しているのだろうと思います。
もしくは行ったことがあっても、何か他の事情を感知できるほどでもない程度だと思います。
自分が経験したこともないことを、識者然として語ることの浅ましさを感じます。
ということで、わたしもマーケターの端くれですし、いきなりステーキの肉マイレージカードのプラチナカード(黒カード)保持者として、この失速の理由を考えてみたいと思います。
わたしは失速の最大の理由は、このマイレージカードプログラムだと思います。
先に、このプログラムの説明をすると、このプログラムはマイレージカードをもらって3000gを累計で食べるとゴールドカードにランクアップします。
ゴールドカードにランクアップすると、ランクアップ時にクーポン1000P(1000円相当)がもらえ、誕生月にUSリブロースステーキ300gが1回だけタダで食べられたり、来店ごとに毎度好きなソフトドリンクが1杯無料になります。
いきなりステーキでは黒ウーロン茶があるので、ソフトドリンク1杯無料でこれを飲んでいる人を多く見かけます。
そして、ゴールドカードの次がわたしが持っているプラチナカードになります。
何g食べたらこのプラチナカードに移行できると思いますか?
なんと、200000gです。
そう20kg。
ゴールドカードが3kgなのに、今度はいきなり20kgです。
プラチナカードになると、ランクアップ時に3000Pのクーポンがもらえ、誕生月に好きな肉300gを1回だけ無料で食べることができ、来店ごとではソフトドリンクだけなくアルコールも1杯無料になります。
いきなりステーキは比較的リーズナブルにそれなりに美味しいワインを用意していると思うので、来店ごとにワインが1杯無料というのは嬉しいかもしれません。
そして、このプラチナカードのさらに上がありまして・・・
ダイヤモンドカードといって、これの到達ラインが100kgとなります。
20㎏の次は、100kgです。
結構20㎏まで行くも大変だったのに、あの苦労を思い出してそれの5倍・・・
目の前が真っ暗になるような量です。
20kgごとでクーポンが出てはきますが、とてもではないですが、その苦労に見合う気もしませんし、肝心のダイヤモンドカードの特典がショボいんです。
ランクアップ時に10000P付与、誕生月と来店時の条件は同じで、自分1名だけだったのが同伴者にプラスされるだけです。
いきなりステーキの客を見ても大体が1人客です。
それなのに、同伴者を条件に加えても無意味というのは自明に思えます。
それだったら、100㎏という超大台に敬意を表して、誕生月はいつ来店しても好きな肉300gが無料とか、アルコール1杯ではなくワインボトル1本無料くらいしてもいいのではと思います。
正直、100㎏までいくような人は相当稀でしょうし、これくらいしても大して痛手はないと思います。
ということで、読んでもらったので、わかると思いますが、マイレージプログラムの条件がハチャメチャなのです。
ハードルが高すぎて心は折れますし、それぞれの目標に応じてそのランクに到達したら、満足してしまって来店頻度が減るのです。
これが失速の大きな理由だと思います。
マイレージプログラムをやるのであれば、ちょっとずつ達成する喜びが湧くように、1kgずつとかコツコツ何かメリットをぶら下げる方が来店促進になると思います。
かく言うわたしは、プラチナカードになって以来1回くらいしか店に行っていません。
どうせ次の100㎏や40㎏なんて高すぎる目標だし、いきなりステーキに通い続けるほど肉に飢えていないし、ここの肉質や旨さに惚れ込んでいるわけでもないし。
わたしが仮にCMOとして、いきなりステーキに入社したら、まずはこのマイレージプログラムを大幅に見直し、ささやかな目標を積み重ねて喜びを得られるようにし、その満足をいきなりステーキへのロイヤリティに昇華させ、来店頻度を増やさせていくようにします。
いきなりステーキで食べ放題を始めていたりしますが、そのようなことを広げても効果は薄いと思います。
ちょっと大食いの肉付きだけが誘引されるだけです。
ほとんどの客なんて、300gか450g食べたらお腹いっぱいになります。
ということで、いきなりステーキがしばらく好調だったのは、ゴールドカード狙いやプラチナカード狙いが足しげく通っていたことが理由で、失速の理由は、それぞれが目標を達成した途端に、「ロスト」感を覚えたり、達成感や満足を感じて、多くのリピーターの足が遠のいたことが原因だと思います。
マーケティングは、自分が利用する側になったらどんな気持ちになるか、訴求された時にどう感じるか、そしてそもそも一般的な人間だったらどう思ったり感じたり行動するか、というように愚直に「人間くさく」考えることが基本だと思います。
顧客視点とお題目のように唱えて、調査分析をしていくことばかりを指していませんし、データとにらめっこしていたら必ず何か有効な示唆が得られるわけでもありません。
いきなりステーキを例にとれば、人間心理からあまりにかけ離れたマーケティング施策を打ちすぎ、ということが一番の問題だと思うわけです。
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